会社名は、会社設立時に必ず決める基本事項です。登記上は「商号」といい、基本的には自由に決められますが、会社形態の表示、使用できる文字・記号、同一商号・同一本店は登記ができないなど、一定のルールがあります。
また、「登記できる会社名」であることと、「事業に最適な会社名」であることは全くの別問題です。会社名は、会社設立後のホームページ、メールアドレス、名刺、請求書、SNSなどで幅広く使用することになります。覚えやすさや、検索したときの見つけやすさ、ドメイン取得の可否などを検討したうえで、会社名を決めることが推奨されます。
この記事では、会社名の決め方について、法律上のルールから、候補の出し方、決定前に確認したい項目、よくある失敗まで、会社設立を専門に扱う司法書士・行政書士が解説します。
会社名の決め方は?まず押さえたい5つのポイント
会社名を決めるときは、見た目や響きだけで決めてはいけません。次の5点を順番に確認するのがおすすめです。
- 法律上、登記できる会社名か
- 読みやすく、覚えやすいか
- 事業内容や理念と大きくずれていないか
- 同名・類似名や商標に問題がないか
- Web検索、ドメイン、メールアドレス等で使えるか
特に重要なのは、会社設立後の営業、採用、Web集客、金融機関・取引先とのやり取り等まで考えることです。
会社名を決めるときの法律上のルール
会社名は基本的には自由に定めることができます。しかし、登記上、一定の制約があることも十分に注意してください。
株式会社・合同会社など会社形態を入れる
株式会社であれば商号中に「株式会社」を含める必要があります。「株式会社○○」のように前につけても、「○○株式会社」のように後ろにつけても構いません。合同会社などの、他の会社形態についても、その会社形態を示す文字を商号に含める必要があります。
前株か後株かは、会社名全体の呼びやすさ、見た目、既存ブランドとの区別などを考えて決めればよいでしょう。
会社名に使える文字・数字・記号
会社名に使える文字は法律で定められています。具体的には、漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字の大文字・小文字、アラビア数字を使用することができます。記号については、「&」「’」「,」「-」「.」「・」の6種類が使用かのうです。
ただし、記号については、使い方に制限があります。例えば、この6種類の符号のうち,ピリオドについては、省略を表すものとして商号末尾に使用が可能ですが,それ以外の符号については商号の先頭又は末尾に使用できません。会社名に、特殊な記号を入れたい場合は、登記前に確認した方がよいでしょう。
同じ本店所在地に同じ会社名の会社は登記できない
会社名と本店所在地の両方が同一である会社が既に登記されている場合、その会社は設立登記をすることができ。
逆にいえば、同じ会社名でも、同じ本店所在地でなければ、登記することは可能です。ただし、登記できることと、その会社名を、事業上安全に使用できることは別です。商標や他社との混同なども確認する必要があります。
失敗しない会社名の決め方6つ
1.事業内容や理念から考える
まずは、何をする会社なのか、誰にどのような価値を提供するのか、将来どのような会社にしたいのかを言葉にしてみましょう。事業内容、理念、創業者の名前、地域、サービスの特徴などから候補を広げると考えやすくなります。
ただし、現在の一事業だけに強く限定された会社名にすると、数年後に別事業へ展開したときに違和感が生じることがあります。将来の事業展開も考えておくことがおすすめです。
2.覚えやすく、読みやすい名前にする
会社名は、経営者自身だけでなく、顧客、取引先、金融機関、採用候補者など多くの人が見たり聞いたりするものです。読めない造語や極端に長い名称は、毎回の会社名の説明がひつようだったり、聞き返されたりする可能性があります。
一度、親族や知人に対して、口頭で伝えただけで、ある程度正しく聞き取れるかを試してみるのもいいかもしれません。電話で会社名を伝える場面まで想像すると、使いやすさを判断しやすくなります。
3.将来事業が広がっても使えるか考える
会社設立時には一つの事業だけを予定していても、将来、関連サービスや別業種へ展開することがあります。会社名が特定の商品・地域・事業だけに限定されすぎていないか確認しておきましょう。
もちろん、地域密着型の事業など、あえて地域名や業種名を入れる戦略もあります。大切なのは「今の事業だけ」ではなく、3年後、5年後にも使いやすいかを意識することです。
4.Googleで検索して他社に埋もれないか確認する
会社名の候補ができたら、その会社名をそのままGoogle等で検索してみましょう。同名・類似名の企業やサービスが多数表示される場合、会社設立後に指名検索で自社を見つけてもらいにくくなる可能性があります。
「検索数の多い一般語を会社名に入れればSEOで有利」と単純には考えない方がよいです。会社名で検索した人が自社へたどり着きやすいか、他社と混同されにくいかという指名検索のしやすさを重視する方が実務的です。
5.ドメイン・メールアドレス・SNSも同時に確認する
会社名を決めてからホームページを作ろうとしたところ、希望するドメインが既に取得されているといったケースがあります。候補段階で、その会社名に関連したドメインが取得できるかどうかを事前に確認しておくと、会社名とWebサイトのブランドを揃えやすくなります。
また、会社名をメールアドレスのドメインにしたときに長すぎないか、英字に直したときに分かりにくくないか、主要SNSのアカウント名を取得できそうかも確認しておくとよいでしょう。これらは登記要件ではありませんが、事業の開始後に影響してきます。
6.英語表記や海外での意味も確認する
会社名にローマ字や外国語を使う場合は、読み方だけでなく、その言葉が他言語で不自然な意味にならないかも確認しましょう。海外との取引や外国人向けサービスを予定している場合は特に重要です。
会社名が決まらないときのアイデアの出し方
会社名は最初から一つに絞るより、複数の方向から候補を出して最後に比較する方が決めやすくなります。
| 考え方 | 例の方向性 | 注意点 |
|---|---|---|
| 創業者の名前 | 姓・名・イニシャル等 | 相続・事業承継時の問題 |
| 地域名 | 地域+業種等 | 他地域展開時の整合性 |
| 事業内容 | サービスや顧客課題を表す言葉 | 事業の多角化時の整合性 |
| 理念・価値観 | 目指す状態、提供価値 | 意味の伝わりにくさ |
| 造語 | 複数の言葉を組み合わせる | 読み方・スペル・検索性 |
AIやネーミングツールをアイデア出しに使うこともできます。ただし、生成された名前が登記可能か、既存法人・商標と衝突しないかまで自動的に保証されるわけではありません。最終決定前の確認は別に必要です。特に生成AIは、既存の情報を基にアイデアを出す傾向があるので、既存の会社名に似た候補をだすことが多くなります。
候補の会社名が決まったら確認したい4項目
1.同じ・似た会社名がないか
国税庁の法人番号公表サイトでは、会社名、本店所在地、法人番号という基本3情報を検索することができます。候補の会社名と同じ・似た法人がどの程度存在するかを見る際の参考になります。
ただし、法人番号公表サイトで同名法人が見つからなかったことだけで、その会社名を安全に使用できると保証されるわけではありません。
2.商標登録されていないか
会社名と商標は別の制度です。登記できる会社名であっても、その名称を商品・サービスに使用することで、他人の商標権との問題が生じる可能性があります。
J-PlatPatでは商標を検索できます。なお、簡易検索は検索対象が限定されるため、重要な名称については検索方法や対象範囲も含めて慎重に確認する必要があります。
3.Google検索で他社と混同されないか
登記・商標とは別に、実際の検索結果も確認しましょう。同じ名称の企業、店舗、サービス、著名ブランドなどが多い場合、設立後に検索結果で自社を見つけてもらいにくくなることがあります。
4.ドメイン・SNSアカウントを取得できるか
会社名と完全一致するドメインでなければならないというルールはありません。ただ、会社名・ドメイン・メールアドレス・SNS名をある程度揃えられると、顧客が認識しやすくなります。設立前に確認しておく価値があります。
会社名の決め方でよくある失敗
- 読みにくい・スペルが分かりにくい:毎回読み方を説明しなければならない。
- 現在の事業に限定しすぎる:事業拡大後に会社名と事業内容が合わなくなる。
- 既存企業・ブランドに似すぎる:検索や取引上の混同、商標等の問題につながり得る。
- 検索結果を確認しない:設立後、自社名で検索しても他社ばかり表示される。
- ドメインを後から確認する:希望するドメインが取得済みで、会社名との統一が難しくなる。
会社名は後から変更できますが、商号変更登記だけでなく、銀行、税務、契約書、請求書、Webサイト、名刺、許認可等への対応が必要になる場合があります。最初から将来の使いやすさまで考える方が負担を抑えやすくなります。
会社名を決めた後に決める会社設立事項
会社名が決まれば、次に本店所在地、事業目的、資本金、役員・株主構成、決算期などを決めていきます。これらはそれぞれ独立した項目ではなく、許認可、創業融資、法人口座、税務、補助金などと関係することがあります。
特に、会社の事業目的、本店所在地、資本金は、設立後の事業運営を見据えて決めることをおすすめします。
「この会社名で登記できるか」だけでなく、設立事項全体をまとめて確認したい場合は、会社設立を専門に扱う司法書士へ相談するとよいでしょう。
会社名の決め方に関するよくある質問
Q. 会社名は既存の会社と同じでも使えますか?
会社名と本店所在地の両方が同一の会社が既に登記されている場合は、その会社名で設立登記できません。本店が異なれば同じ会社名でも登記は可能ですが、商標や他社との混同などは確認する必要があります。
Q. 会社名にアルファベットは使えますか?
はい。ローマ字の大文字・小文字を商号に使用できます。数字も使用できます。
Q. 会社名にはどんな記号を使えますか?
「&」「’」「,」「-」「.」「・」の6種類が使用できます。ただし、使用位置などにルールがあります。
Q. 「株式会社」は会社名の前と後ろのどちらにつけてもよいですか?
どちらでも構いません。「株式会社○○」「○○株式会社」のいずれも可能です。
Q. 商標登録されている名前は会社名にできますか?
登記することはかのうです。しかし、その名称の使用が他人の商標権との問題を生じさせる可能性があります。
Q. 会社名とドメインは同じにした方がよいですか?
同じでなければならないルールはありません。ただ、顧客から見た分かりやすさやブランド統一の観点では、近い名称にしたほうが良いかと思います。
Q. 会社名は設立後に変更できますか?
変更できます。ただし商号変更登記のほか、銀行、契約書、請求書、Webサイト、許認可等で変更対応が必要になる場合があり、費用はもちろん、手間も多くかかることになります。
Q. 会社名と屋号は何が違いますか?
法人の登記上の名称が会社名です。一方、屋号は個人事業や店舗・事業の名称として使われる言葉で、法人の会社名とは同じ概念ではありません。
会社名で迷ったら会社設立全体と一緒に相談する
会社名は、設立登記だけでなく、その後の営業、Web集客、金融機関・取引先とのやり取り等、長く使う重要な項目です。
工藤司法書士行政書士事務所では、会社名だけでなく、事業目的、本店所在地、資本金、役員・株主構成などの設立事項をまとめて確認し、許認可や創業後の手続も見据えて会社設立を進めます。
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